督促は「感情」ではなく「プログラム」で動いている
「毎日電話がかかってきて怖い」 「いつ裁判になるのか不安で眠れない」
借金を滞納している時、多くの人がこう感じます。しかし、元・回収業務部長として断言します。 私たちは、怒りや感情で電話をしているわけではありません。
すべては**「コスト」と「回収確率」を計算したプログラム(アルゴリズム)」**に沿って、淡々と事務的に行われています。
この記事では、私が現場で実際に運用していた**「督促の3つの危険レベル」**を内部事情とともに公開します。 あなたの今の状況がどこに当てはまるのか、冷静に判断するための指標にしてください。
レベル1(初期):コストをかけない「機械的処理」フェーズ
滞納が始まって間もない頃や、金額がまだ少ない段階です。 この段階での業者の目的は**「うっかり忘れなのか、金欠なのかを選別すること」**です。
コストをかけずに大量に処理するため、基本的には人間ではなくシステムが動きます。
1. オートコールとIVR(自動音声)
最初はオペレーター(人間)すら出てきません。 コンピューターが自動的に電話をかけ、出ると「お支払いの確認が取れておりません」「至急お支払いください」という事務的な自動音声(IVR)が流れます。
特徴: 個人名を特定するスクリプトは使いません(間違い電話のリスク回避)。
留守電: 自動的にメッセージが吹き込まれることもあります。
ワン切りの有無: 闇金などの悪質業者は「ワン切り」をして折り返しを狙いますが、まともな金融機関は顧客体験(UX)を損なうことは基本的にしません。
2. 知らない番号からの着信
携帯番号(090/080)や、知らない固定電話から着信があった場合、まずはその番号をGoogleで検索してみてください。 「〇〇株式会社の督促センター」といった口コミが出てくるはずです。
検索して正体がわかれば怖くありません。ただし、「無視し続ければ解決する」わけではないので注意が必要です。
レベル2(中期):プレッシャーを強める「心理戦」フェーズ
レベル1の機械的な督促を無視し続けると、回収難易度が高いと判断され、**「法的な罠」**を仕掛けるフェーズに入ります。
1. 「1,000円だけでいいから」の甘い罠
電話に出ると、担当者が優しくこう言うことがあります。 「全額は無理でも、とりあえず1,000円だけ入金してくれませんか? そうすれば督促を一時的に止めますよ」
これは、お金がない人の心理を突いた強烈なトラップです。
狙い: 1円でも支払わせることで、**「時効の中断(更新)」**を成立させるためです。
リスク: 「あと少しで時効でチャラになったはずの借金」が、その1,000円を払った瞬間にリセットされ、また支払い義務が復活してしまいます。
2. 「期限の利益の喪失」という警告
督促状に、あえて**「期限の利益の喪失」**という難しい法律用語が書かれ始めたら要注意です。
意味: 「あなたはもう分割払いの権利を失いました。残金を一括で払ってください」という通告です。
無視すると: 毎月数千円の支払いで許されていたものが、明日から数百万円の一括請求に変わります。
対策: この文言が出たら、「〇月〇日までにいくら払わないといけないのか」を死ぬ気で読んで理解してください。ここを読み飛ばすと取り返しがつかなくなります。
レベル3(末期):コスト度外視の「現地調査・回収」フェーズ
電話も手紙も無視すると、ついに「人」が動きます。 ここには**「調査」と「回収」**の2パターンがあり、対応が全く異なります。
パターンA:隠密に行動する「居住実態調査」
債権回収会社などから委託された調査員が、あえて目立たない私服であなたの家を見に来ます。 目的は「本当にそこに住んでいるか(裁判書類を送って大丈夫か)」の確認です。
監視ポイント:
郵便受けに郵便物が溜まっていないか
電気やガスのメーターは動いているか
ベランダの洗濯物の状況
プロの手口:
車のタイヤの上に小石を置く(翌日落ちていれば車を使った=本人がいる)
ドアの隙間に目立たない紙片などを挟む(ドアの開閉確認)
置き土産: ポストに「ご連絡依頼」などの書類をそっと投函します。これに**「消印」がない場合**、それは郵送ではなく「誰かが直接家に来た」という動かぬ証拠です。
パターンB:圧力をかける「訪問回収」
こちらは明確に回収・交渉を目的としています。 多くの場合、スーツを着用し、2人組で行動し、身分証を携帯しています。
「居留守」や「受取拒否」は通用するか?
結論から言うと、逆効果であり、自らの首を絞めます。
居留守のリスク: 調査は複数日行われます。住民票の確認はもちろん、隣人や管理人に「聞き込み」も行います。「昨日、あなたを探している人がいましたよ」と近所の人に言われたら、外堀は埋められています。悪質だと判断されれば、裁判への道が加速します。
内容証明の受取拒否: 「受け取らなければ読んでないことになるから大丈夫」というのは大きな間違いです。 多くの契約約款には**「住所変更を届け出ていない等の理由で届かなかった場合、通常届くべき時期に届いたものとみなす(みなし到達)」**という規定があります。 つまり、あなたが受け取りを拒否しても、法的には「通告完了」となり、知らぬ間に不利な立場に置かれることになります。
まとめ:あなたの「レベル」はどこでしたか?
私が回収業務部長として見てきた現場のリアルをお話ししました。
レベル1なら、まだ話し合いでなんとかなります。
レベル2の「1,000円トラップ」や「期限の利益喪失」が出ているなら、黄色信号です。
レベル3の「訪問(石やドアの細工)」や「近所への聞き込み」が発生しているなら、もう個人の力では止められません。
敵(業者)は、プロの知識とシステム、そして法的な罠(約款)を駆使してあなたを追い詰めます。 丸腰で戦うのはやめて、こちらも「法律」という武器を持って対抗してください。

コメント